Abstract / Introduction / Summary:
マンボウ属Molaはフグ目マンボウ科Molidaeに属し,世界中の温帯・熱帯海域に広く分布する大型魚類である(Sawai et al., 2017).日本近海に出現するマンボウ属魚類は,ウシマンボウMola alexandrini (Ranzani, 1834)とマンボウMola mola (Linnaeus, 1758)の2種のみが確認されており,両種は長い間混同されてきた歴史をもつことから,両種を明確に識別したデータを蓄積することが求められている(例えば,澤井,2017).
このたび,2024年5月末に三重県尾鷲市沖で中型のマンボウ属1個体が漁獲された.本個体の漁獲動画はX(旧Twitter)上で14000件以上リポストされ,複数のマスメディアによっても取り上げられたことで,インターネット上で大きな話題となった(例えば,FNNプライムオンライン,2024;キクチ,2024;名古屋テレビ放送,2024;兎耳山,2024).しかしながら,これらマスメディアの記事に書かれた情報と本研究で調査して得られた情報にはいくつか相違があり,また本個体には個体変異と考えられる形態的特徴が確認されたため,それらについてここで議論・報告する.