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「万之瀬川河口干潟」保護への歩み

柳田一郎

Abstract / Introduction / Summary:

平成 19 年 5 月 27 日,日本環境教育学会・鳥 取大会において,万之瀬川河口の天然記念物指定 の経過について発表しました.約 14 年にわたる 経過は,各地で活動している人々の関心を集め, この 14 年を支えた力についての興味が高まりま した.私は,なぜこのようなことができたのかと いう質問に,「焦らず,騒がず,みんなが真剣に 力を合わせて,できることをしたから」と答えま した. 水害防止のための河川改修ができなくなる,と いう誤解もあったとも聞きました.しかし,大水 害を経験した土地に,防災工事は不可欠であると 思いました.私は,かつて土木事務所に勤務し, 日本の土木技術にできないことは無いと信じてい ます.そして,現地には「親水」とは一味違う考 え方で,人も生物も共に守る堤防ができました. 今年にはいると,吹上浜県立自然公園の公園計画 変更への動きも始まりました.これは,現地で暮 らし,現地に関わる人々が,人間生活の保護と生 物の保護を真剣に考え,柔軟な発想による懸命の 工夫を行った官民協働の成果であると思います. 私は,近い将来,「限界集落」を克服するため の地域間の生存競争(サバイバル)において,地 域資源,中でも自然資源は,最後の切り札になる と思っています. 万之瀬川河口干潟の生態系 鹿児島県薩摩半島中部の南さつま市,東シナ 海に注ぐ一級河川「万之瀬川(まのせがわ)」の 河口(図 1)には,豊かな生物相をもつ広大な干 潟があります. ① 1 千株を超える海浜植物「ハマボウ」の大 群落. ②国内最大の生息地とされる「ハクセンシオ マネキ」(図 2)の群棲地. ③冬の貴重な渡り鳥「クロツラヘラサギ」を 始め,カモ類など水鳥の越冬地. ④南限の二枚貝「ハマグリ」の自生地. ⑤「アカウミガメ」の産卵地.