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鹿児島市内の水田における野生哺乳類の出現状況

中村南美子・中西良孝・髙山耕二

Abstract / Introduction / Summary:

水田にアイガモ雛を放し,殺虫剤や除草剤を使わずに水稲を栽培するアイガモ農法は有機稲作技術の1つとして広く認知されている.アイガモ農法は1990年代はじめに福岡県の古野隆雄氏が提唱し,その後,全国的に普及した(萬田,1995).しかしながら,当時から課題とされてきたアイガモに対する野生鳥獣被害は未だ解決していない(髙山ほか,2011).アイガモ農法に取り組む生産者に対するアンケート調査では,総回答数75のうち65%で野生鳥獣による被害を受けているとの回答があり,放飼したアイガモの約1/4が食害されていることが示され,そのうちの半分近くが水田放飼から1週間以内で被害を受けていることが明らかになっている(髙山ほか,2011).被害をもたらしている野生鳥獣の種類については,ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)やハシボソガラス(C. corone)のカラス類によるものが約25%,そしてニホンイタチ(Mustela itatsi;以下,イタチ)によるものが約25%と両者が半分を占める一方で,加害した野生鳥獣の種類が不明との回答が46%と最も大きな割合を占めていた(髙山ほか,2011).野生鳥獣による被害対策を講じる上で,農地毎に出現する加害鳥獣を予め特定することは重要であり,フィールドサイン(足跡や糞)や自動撮影カメラにより確認することができる(農林水産省,2018).特に後者は,加害鳥獣の中でも陸上で活動するイタチ,ニホンアナグマ(Meles anakuma),ホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides viverrinus;以下,タヌキ),ホンドキツネ(Vulpes vulpes japonica;以下,キツネ)などを映像により確実に特定でき,出現時間などの情報も入手することが可能である.そこで本研究では,鹿児島市内の中山間地域に位置する水田に自動撮影カメラを設置し,野生哺乳類の出現状況を調査するとともに,加害獣となり得る種の特定を行った.