Abstract / Introduction / Summary:
トビウオ科ニノジトビウオ属魚類Hirundichthysは,臀鰭起部が背鰭起部よりも前方に位置すること,背鰭軟条数が臀鰭軟条数よりも少ないこと,および胸鰭と腹鰭が長く,その後端がそれぞれ臀鰭基底後端と臀鰭起部よりも後方に達することなどによって特徴づけられ(今井,1954; Parin, 1999),日本近海からはニノジトビウオHirun-dichthys speculiger (Valenciennes, 1847)とホソアオトビHirundichthys oxycephalus (Bleeker, 1852)の2種のみが知られている(藍沢・土居内,2013).そのうち,ニノジトビウオは全世界の暖海に広く分布するものの(Shakhovskoy and Parin, 2013),鹿児島県内においては島嶼域からのみ報告されており(今井,1954, 1960; Motomura et al., 2010; Motomura and Harazaki, 2017),日本国内における出現数もホソアオトビと比較して著しく少ないとされている(今井,1954, 1960;田中・阿部,1955;吉野,1984). 2018年9月12日,大隅半島東岸に位置する内之浦湾において,1個体のニノジトビウオが採集された.本標本は本種の九州沿岸における初めての記録となるため,ここに報告する.