Abstract / Introduction / Summary:
ハシキンメGephyroberyx japonicus (Döderlein, 1883)は体長20 cm以上に成長する大型のヒウチダイ科魚類で,水深100–750 mに生息する(林,2013).本種はDöderlein (1883)によって東京市場に水揚げされた個体に基づき記載されたのち,Jordan et al. (1913)によって和名ハシキンメが提唱された.なお,属名の”gephyro”は「橋」を,beryxは「キンメダイBeryx splendens Lowe, 1834」をそれぞれ意味し(清水,1997),和名はこれを直訳したものと思われる.
また,ヒウチダイ科魚類はニュージーランド近海などに分布し,アメリカなどにおいて高級食用魚として名高いHoplostethus atlanticus Collett, 1889(一般にオレンジラフィー等と称される;山田ほか,2007;小枝,2018b)など,美味な魚が多く含まれる.ハシキンメもその例に漏れず,美味な魚として知られ(清水,1997;山田ほか,2007),静岡県沼津市などでは盛んに漁獲され,高級魚として扱われる(小枝,2018a).しかし,本種の鹿児島県における分布記録は少なく,標本に基づくものは内之浦湾と,奄美大島からのものに限られた(小枝,2018a; Nakae et al., 2018). 2018年4月19日,鹿児島市の対岸に位置する垂水市沖から1個体のハシキンメが底曳網により漁獲された.本標本は鹿児島湾における本種の標本に基づく初めての記録となるため,ここに報告する.