Abstract / Introduction / Summary:
シマガツオ科魚類Bramidaeは日本近海から6属10種が知られ(波戸岡・甲斐,2013; Hibino et al., 2014),そのうちツルギエチオピアTaractes rubescens (Jordan and Evermann, 1887)を除く9種が鹿児島県から報告されている(畑ほか,2015;畑・本村,2016;畑,2017, 2018).また,本科魚類の1種,リュウグウノヒメPterycombus petersii (Hilgendorf, 1878)は漁獲されることが極めて稀な魚として知られる(Last and Moteki, 2001).本種は幼魚期に極めて大きな背鰭と臀鰭をもち(波戸岡・甲斐,2013),その特徴的な形態から日本近海において漁獲されると,報告されることも多く(例えば田中,1950;水沢,1964;本間・杉原,1964),水族館において飼育が試みられたこともある(冨山,2013).しかし,鹿児島県における記録は極めて少なく,薩摩半島西岸(南さつま市笠沙町沖)と大隅半島東岸(内之浦湾)からのものに限られ(畑ほか,2015;畑,2018),薩南諸島における記録はなかった. 2016年7月20日,鹿児島県大隅諸島種子島北方から延縄により,1個体のリュウグウノヒメが漁獲された.本標本は薩南諸島における本種の初めての記録となるため,ここに報告する.