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鹿児島市北部における陸産貝類の分布

君付雄大・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県は,南北に広大な土地を有し,多種 多様な生態系が見られ,生物が分布している.そ の中で,陸産貝類は乏しい移動能力のため,独自 の気候に適した固有種が多く発見されてきた.鹿 児島県の離島は本土とは異なった気候を有してい るため,詳細な調査を行い多くの固有種が生息し ていることが分かっている.しかしながら,鹿児 島市周辺は自然度に乏しいと見なされ,見過ごさ れてきたため,詳細な調査が行われてこなかった. そこで,本研究は,鹿児島市の北部に位置する八 重山,郡山,吉田,吉野を主な調査地として,陸 産貝類相の調査を行い,特徴や類似点,相違点を 明らかにすることを目的とした. 本調査は,2016 年 4 月から 12 月にかけて 13 地点でサンプリング調査を行った.採取は主に見 つけ取りで行い,落葉内部や樹幹を 1 時間程度探 した.微小貝については,見つけ取りで採取が困 難なため,土壌を約 500ml 採取し,研究室に持 ち帰り,乾燥機,ふるいにかけ,双眼実体顕微鏡 を用いて採取を行った.その後,水で十分に洗浄 し乾燥させ,種の同定を行い保存した.採取でき た陸産貝類をもとに多様度指数,類似度指数を算 出した.その後,他地点との類似性を分かりやす くするために,類似度指数を使い,クラスター分 析を用いてデンドログラムを作成した. 調査の結果,2 目 11 科 19 属 19 種の陸産貝類 が採取できた.その中で,吉田運動場で種数,個 体数ともに最も多くを記録し,八重山公園,花尾 神社では最も少ない種数,寺山公園で最も少ない 個体数を記録した.算出した多様度指数は吉野公 園が最も高く,八重山公園,花尾神社で最も低い 結果となった.花尾神社は調査を行った他の 12 地点と比べデンドログラムから最も異なった環境 となっていることが分かった. 鹿児島市北部においては,採取数や出現地点 数からアツブタガイとヤマクルマガイが陸産貝類 の優占種であると考えられる.他の調査記録から 鹿児島県に数多く生息しているアズキガイが今回 の調査地点ではほとんど採取することができな かった.鹿児島市北部ではアズキガイが生息する のに適さない要因があると考えられる.また,吉 野公園は最も多くの希少な微小貝が採取できてお り,重要な生息地となっていることが考えられる. オオクラヒメベッコウに関しては,県本土では大 隅地方に生息していると記録があるが,薩摩地方 では記録がない.吉野公園は薩摩地方でのオオク ラヒメベッコウの生息の初記録である.調査した 地域では土壌が豊かな地点ほど多様度指数が高く なる傾向にあった.逆に,八重山公園や八重山遊 歩道沿いなどでは,土壌の層が薄かったため,種 数や個体数が乏しかったと考えられる.鹿児島市 北部においては地域的な関連はあまり見られな かった.これは険しい山々によって生息地が分断されてしまったことが原因ではないかと考えられる.この調査結果をより信憑性の高いものにしていくには,より細かい調査が必要になってくると考えられる.