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鹿児島県本土におけるケフサイソガニとタカノケフサイソガニの分布

黒江修一

Abstract / Introduction / Summary:

ケ フ サ イ ソ ガ ニ Hemigrapsus penicillatus (de Haan, 1835) は,北海道から沖縄までの内湾や河 口域の石の下などに最も普通にみられるカニの一 種で,鹿児島や宮崎の汽水域にはほぼ確実に生息 が確認できる.一方,かって考えられていたケフ サ イ ソ ガ ニ が, 近 年 タ カ ノ ケ フ サ イ ソ ガ ニ Hemigrapsus takanoi Asakura and Watanabe, 2005 と ケフサイソガニに分けられたため,分布の再検討 が必要である.両種とも形態的には大変よく似て おり,両種の雄には常に鉗脚指部の根元に毛の束 が叢生している.ただし,タカノケフサイソガニ の毛の束はケフサイソガニより大きい(三浦, 2008).この毛の束は両種とも雌にはみられない. また,ケフサイソガニには雌雄ともに黒い大きな 斑点が腹部にみられるが,タカノケフサイソガニ の雄では非常に少ないか,雌と同様全くみられな い(図 1, 2). 両種の分布について,秋和(2003)は,東京 湾沿岸の 18 地点の調査結果から,タカノケフサ イソガニは内湾により多く,逆に外洋的環境では ケフサイソガニが優占する傾向にあることを見出 している. 鹿児島県の内湾や河口域におけるケフサイソ ガニの生息状況はよく知られているが,鹿児島県 本土における両種を対象にした分布調査はこれま でほとんど行われていない.そこで筆者は,主に 鹿児島県本土を流れる河川の河口域で両種の分布 調査を実施した.その結果,同一河口域における ケフサイソガニとタカノケフサイソガニの分布状 況が明らかになったので報告する.