Abstract / Introduction / Summary:
トカラ列島は,鹿児島県の屋久島と奄美大島 の間に位置し,有人島 7 島,無人島 5 島で構成さ れている.悪石島と小宝島の間には,生物地理学 上の区系分布境界線である渡瀬線が存在し,旧北 区と東洋区それぞれの特徴を示す生物群が生息す る 島 々 と し て 知 ら れ て い る( 例 え ば, 阿 部, 2005). 島にはネズミの駆除を目的としてイタチが持 ち込まれたり,観光目的としてマゲシカが持ち込 まれた過去がある(十島村,1995).これに加え てトカラ列島の固有品種とされるトカラヤギは, 家畜として管理されていたものが一部野生化して いる(十島村,1995). 平成 17 年に施行された外来生物法では,在来 種に大きな影響を与える種群は,特定外来生物や 要注意外来生物に指定され,規制や注意喚起の対 象となっている.しかしこれは国外からの外来種 に限定されており,在来種の国内での人為的な移 入は,法的規制が係っていないものの,森林生態 系や島嶼でのトカゲ類や昆虫類にとって大きな脅 威となっている(日本生態学会,2002). トカラ列島の島々のうち,口之島,中之島,臥 蛇島,平島,諏訪之瀬島,悪石島にはイタチが移 入されたことが記録として残っている(十島村, 1995).しかしながら,今回口之島にて調査を実 施した結果,確認されたのはイタチではなくテン (Martes melampus)であったためここに報告する. なお,トカラ列島に持ち込まれ定着しているイタ チは,ニホンイタチ(Mustela itatsi:イタチと表 記される場合もある)とされているが(阿部, 2005),厳密に分類学的な研究はなされておらず, チョウセンイタチ(M. sibirica)が含まれる可能 性もある.また,十島村(1995)では島によって 亜種コイタチ(M. i. sho)と表記されている.そ のため,本稿ではテン以外のイタチ型動物をイタ チと表記する.