Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県の薩摩半島南西部に位置する野間岬沖は多様な鯨類が出現する海域として知られている.1996年から2003年にかけて野間池漁協(現在の鹿児島県漁業協同組合南さつま野間池支所) よって夏~秋季にホエールウォッチングが実施されており,“ニタリクジラ”や小型ハクジラ類が観察対象となっていた(中原ほか,1999;鹿児島県漁業協同組合南さつま野間池支所,私信).また,2002年から2005年にかけては本海域に出現する“ニタリクジラ”の個体識別も実施されていた(木白,2012).しかし,現在はホエールウォッチングや鯨類の調査は実施されておらず,近年の本海域に出現する鯨類に関する知見は乏しい状況である.なお,上述の“ニタリクジラ”は現在ではカツオクジラBalaenoptera edeni Anderson, 1879 と考えられる(結果と考察の項を参照).
そこで,鹿児島県内の鯨類の生息状況と種多様性を解明するため,2024年8月6日に野間岬沖海域で船舶を用いた鯨類の目視調査を実施した.その結果,カツオクジラB. edeniとハシナガイルカStenella longirostris (Gray, 1828)が確認され,薩摩半島南西部沖における鯨類の出現情報を記録するために調査により得られた結果の概要を報告する.