Abstract / Introduction / Summary:
マンボウMola mola (Linnaeus, 1758)はフグ目マンボウ科Molidaeマンボウ属Molaに属し,世界中の温帯・熱帯海域に広く分布する大型魚類である(Sawai et al., 2017b).日本近海におけるマンボウは北海道以南に分布し(例えば,Yoshita et al., 2008;澤井,2017),おそらく1981年5月22日に愛媛県越智郡宮窪町早川沖に設置された袋待ち網で漁獲された全長320 cmの個体は実際に計測された中で本種の日本最大記録である(越智郡宮窪町中央公民館,1981;Sawai and Nyegaard, 2022).
一方,日本近海におけるマンボウ属はマンボウの他にウシマンボウMola alexandrini (Ranzani, 1834)が確認されており,両種は混同されてきた長い歴史をもつ(例えば,Yoshita et al., 2008;澤井,2017).それ故,マンボウとして報告されてきた過去の多くの研究はマンボウとウシマンボウが明確に区別されていないため,改めて両種を種レベルで明確に区別した上での分布の再調査や生態的知見の再蓄積が求められている(松浦,2017).
筆者が知る限り,岡山県が属する播磨灘(石丸,1721;白井,1934;石丸,1965;鴨川シーワールド,2010;西松,2017;増田,2018)や備讃瀬戸(山田ほか,2007;鴨川シーワールド,2010)の海域からのマンボウ属の記録はあるが,明確にマンボウと同定された岡山県からの記録は石丸(1721)のみである(澤井,2016).
このたび,2024年6月に岡山県の北木島沖でマンボウ1個体が新たに漁獲された.筆者が調べた限りでは,これまで備讃瀬戸の岡山県側の海域からマンボウと同定された明確な記録は見つからず,また先行研究での笠岡諸島や北木島からのマンボウの記録も見つからなかったため,ここに確かな記録として報告する.