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写真に基づく中ノ島(隠岐諸島)から得られたマンボウの確かな記録

澤井悦郎・大池 明

Abstract / Introduction / Summary:

マンボウMola mola (Linnaeus, 1758) は世界中の温帯・熱帯海域に分布し,フグ目マンボウ科Molidae に属する大型魚類である(Sawai et al., 2017b).日本近海において,マンボウは北海道以南に広く分布している(例えば,Yoshita et al., 2008;澤井,2017).筆者らが知る限り,島根県・隠岐諸島からのマンボウの記録はあるが(山田ほか,2007: fig. 1 in page 1253; Yoshita et al., 2008; 山野上ほか,2010;波戸岡・萩原,2013;池田・中坊,2015;澤井,2017: fig. 3-10 in page 93),山野上ほか(2010)と澤井(2017)で使われたデータはYoshita et al. (2008) が遺伝的に調査した2004 年5 月12 日の個体(サンプルコードOS-1)と同一個体であり,残りの3 文献(山田ほか,2007; 波戸岡・萩原,2013;池田・中坊,2015)は個体の情報が示されていないため詳細は不明である. また,日本近海のマンボウは同属のウシマンボウMola alexandrini (Ranzani, 1834) と混同されてきた長い歴史があり(例えば,Yoshita et al., 2008;澤井, 2017),隠岐諸島産の個体情報が不明な3 文献(山田ほか,2007;波戸岡・萩原,2013;池田・中坊, 2015)のデータはウシマンボウを基にしていた可能性もある.加えて,川上ほか(2008)は美保関灯台(島根県)と隠岐諸島の間の海域(やや隠岐諸島寄り)で,2007 年11 月15 日にマンボウ属Mola 3 個体[全長265 cm の1 個体はサンプルコードMS-1 として山野上ほか(2010)で遺伝的にマンボウと同定された]が漁獲されたことを報告した.以上より,隠岐諸島からのマンボウの知見は非常に少ない. 隠岐諸島は本州の島根半島から北に40–80 km 離れた場所に点在する4 つの有人島と180 前後の無人島からなり,4 つの有人島のうち,本州に近い知夫里島(知夫村),中ノ島(海士町),西ノ島(西ノ島町)の3 島は島前,本州から遠い1 島は島後( 隠岐の島町) と呼ばれる( 井上ほか, 2019).これまでの隠岐諸島からのマンボウの記録は,どの島に近い場所で漁獲されたのかは不明瞭であったが,このたび,2023 年12 月に中ノ島沖で新たにマンボウ1 個体が漁獲された.中ノ島からのマンボウの記録は先行研究(海士町役場地産地商課,2016)でも確認されていないため,ここに確かな記録として報告する.