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沖永良部島におけるツミの繁殖

中村麻理子・田中伸一・鮫島正道

Abstract / Introduction / Summary:

ツミAccipiter gularis (Temminck & Schlegel, 1844)は,夏鳥または留鳥として北海道から九州,奄美諸島と沖縄諸島でみられ,一方,亜種リュウキュウツミAccipiter gularis iwasakii Mishima, 1962は留鳥として石垣島,西表島と与那国島でみられるとある(日本鳥学会,2012).

鹿児島県内のツミの繁殖は喜界島と与論島で確認されているが(鹿児島県RDB,2016),ここでは,基亜種ツミAccipiter gularis gularis (Temminck & Schlegel,1844)であるのか亜種リュウキュウツミAccipiter gularis iwasakii Mishima,1962なのかは定かにされていない.高木(2008)によればリュウキュウツミの繁殖記録は与論島のみであり,他の島嶼での可能性もあるとしている.またツミとリュウキュウツミの亜種レベルでの同定は難しく注意が必要であるとしている(森岡,1995).本報告での沖永良部島の繁殖記録も種レベルとしてのツミとして扱い,沖永良部島に生息するツミがリュウキュウツミであるか否かの判断はつけていない.今後,遺伝子レベルの研究が俟たれる. ツミの一般的な形態・生態の概要について述べる.雄の全長は約27 cm,雌は約30 cmで猛禽類の中では小型である.生息環境は平地から山地の林や市街地の緑地,都市公園,植林地など様々である.繁殖期は3–8月で,巣はマツなどの高い木の枝に皿型の巣をつくる.食性は主に小型鳥類であり,その他は昆虫類,哺乳類,爬虫類などを採食する(清棲,1978).繁殖生態については明らかにされているが地域別の詳細な情報は少なく,さらに島嶼別での確認事例は断片的である.

沖永良部島のツミの繁殖は平地の林でみられ,繁殖環境は植林されたリュウキュウマツとモクマオウの林であった.これまで沖永良部島での詳細な繁殖の報告例はない.本研究は沖永良部島で繁殖するツミについて生態写真を添えてここに報告する. 鳥類の繁殖生態についての情報は自然環境の保全という課題に応えるため極めて重要であり,基礎資料としても必要である.特に地域別の繁殖状況や繁殖の有無に関する現状把握のための確認調査は,広い意味での「鳥類の保護」に通ずるものがある.