Abstract / Introduction / Summary:
カスミサンショウウオHynobius nebulosusはこれまで西日本に広く生息する種であったが,2019年に細分化されたことで,福岡県から鹿児島県にかけて分布する九州地方における止水性の小型サンショウウオとなった(Matsui et al., 2019).鹿児島県北部には本種の南限となる個体群の生息が知られており(鮫島,1999;鮫島ほか,2013;宅間ほか,2013, 2016),県の天然記念物及び鹿児島県レッドデータブック(鹿児島県,2016)において絶滅危惧II類に指定されている.
南九州西回り自動車道の一部区間であり,平成29年11月に全線開通した「出水阿久根道路(出水IC-阿久根IC,延長14.9 km)」(図1)においては,平成17年12月に環境影響評価書が公告・縦覧されている.
上記区間において確認されているカスミサンショウウオについては,平成18年度より移設及び生息地におけるモニタリング調査等が実施されており,平成26年度調査時に計画路線に設置されている集水桝内で多数の成体,幼生,卵のうが確認され,産卵に訪れた成体が這い上がれない状況にあった.これらの個体に対する保全措置を実施するにあたり,事前に室内実験を行い,保全措置の内容を検討した結果,壁材等で足場を設置することにより垂直面を這い上がることが可能であることが検証された(徳重ほか,2019). 室内実験の結果を踏まえ,実際に野外の集水桝において這い上がりのためのスロープを設置した結果について報告する.