/ 046-085

鹿児島県の外来植物I:ヨシススキとキンチャクソウ属の1種サケバキンチャクソウ(新称)

田金秀一郎・丸野勝敏・中川優花里・宮本旬子

Abstract / Introduction / Summary:

外来植物は,侵入先の生態系を脅かす事例が世界各地で数々報告されており,特に近年は急速に拡大・活発化する人やモノの移動に伴って増加傾向にある.

2010年10月に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議では,「2020年までに侵略的外来種とその定着経路を特定し,優先度の高い種を制御・根絶すること」等を掲げた愛知目標が採択された.鹿児島県においても,この流れに沿って2019年4月に「指定外来動植物による鹿児島の生態系に係る被害の防止に関する条例」が施行され,同10月には「指定外来動植物被害防止基本方針」が策定されるなど,貴重な生態系を保全するための取り組みは着々と進展している.

その一方で,日本の中で植物多様性が極めて高い鹿児島県においては,地域内に生育する植物相の基礎的知見が十分とは言い難い.外来植物の被害防止のためには,移入阻止や駆除等の適切な対策を講じる必要があるが,そのためには外来植物の自生情報や生態に関する知見を積み重ね,正しく理解しておかねばならない.

今回の報告では,鹿児島県内の地域でこれまでに記録がなかったイネ科ヨシススキErianthus arundinaceus (Retz.) Jeswietとキンチャクソウ科サケバキンチャクソウ(新称)Calceolaria tripartita Ruiz & Pav.の帰化情報について新知見を報告する. 植物標本は,同定の検証やラベルから分布や開花期情報を読み取る,また近年はDNA解析にも用いられる等,科学的根拠として重要である.今回の報告で得た証拠標本は鹿児島大学総合研究博物館植物標本室(KAG)に収蔵した[標本データベース(https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/hyouhonsitu.html)にて閲覧可能].