Abstract / Introduction / Summary:
ネコザメ科魚類Heterodontidaeはインド・汎太平洋の暖海に1属9種,日本国内においてはネコザメHeterodontus japonicus Maclay and Macleay, 1884とシマネコザメHeterodontus zebra (Gray, 1831)の2種が知られている(波戸岡ほか,2013;中坊,2018).本科魚類の生殖方法は卵生であり,特徴的な螺旋状の突起のついた卵殻を岩の割れ目などに産む繁殖生態が知られている(仲谷,1997,2011).ネコザメは北西太平洋に分布し(Dyldin, 2015),浅海の岩礁や藻場に生息しており全長1.2 mに達する(仲谷,1997;波戸岡ほか,2013).また,本種は臼歯でサザエや甲殻類の殻を割って摂餌する生態を持つためサザエワリと呼ばれることもある(仲谷,1997). 2019年3月27日にトカラ列島平島で1個体のネコザメが釣獲された.本種の琉球列島における分布の記録は写真や目視・伝聞によるもののみであり(中村,1970;藤山,2004;Nakae et al., 2018),標本に基づく記録は報告されていない.したがって,上述の個体はネコザメが琉球列島に生息することを証明する証拠標本となるためここに報告する.