/ 043-048

トカラ列島臥蛇島沖で観察されたホシフグの繁殖行動

福井美乃・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

フ グ 科 の ホ シ フ グ Arothron firmamentum (Temminck and Schlegel, 1850) は,本科魚類の中 で唯一反赤道性分布を示し(Hardy, 1980; 松浦, 2017),北半球(日本,東シナ海,および南シナ 海北部)と南半球(ニュージーランド,オースト ラリア東部,ニューカレドニア,南アフリカ,お よびアルゼンチン)に不連続に分布する(山田・ 柳下,2013;松浦,2017).本種はまれに水深 15–40 m で確認されるが,主な生息水深は 100– 400 m であり,フグ科魚類の中で最も深いことが 知られている(松浦,2017).日本海沿岸では本 種の大量漂着が報告されているが(松浦,1984, 1997;渕ほか,1998;久保田ほか,2012),生態 に関する記録は乏しい. 2016 年 11 月に鹿児島県トカラ列島の臥蛇島沖 で鹿児島大学水産学部付属練習船かごしま丸に よって行われた海洋観測中に,海面近くでホシフ グが集団で産卵する様子が確認された.その様子 は写真と動画で記録され,産卵行動中の 5 個体の 標本が採集された.ホシフグの産卵行動はこれま でに知られていないため,臥蛇島沖で観察された ホシフグの産卵行動を報告する.さらに,鹿児島 県南さつま市笠沙沖の定置網へホシフグが大量入 網した記録と屋久島で観察されたホシフグの群れ の行動をあわせて報告する.