Abstract / Introduction / Summary:
ミズン Herklotsichthys quadrimaculatus (Rüppell, 1837) はニシン目ニシン科ミズン属に属する沿岸 性魚類で,インド・西太平洋に広く分布する (Whitehead, 1985; Munroe et al., 1999;青沼・柳下, 2013).本種は,沖縄県において多数が漁獲され, 古 く か ら 食 用 に 供 さ れ( 阿 嘉 島 臨 海 研 究 所, 2001;吉村,2014;上原ほか,2015),首里城京 の内跡や伊江島にある貝塚時代の遺跡ナガラ原東 貝塚からも本種の骨がみつかっている(樋泉, 2003;沖縄県立埋蔵文化財センター,2016).沖 縄県内のカツオ漁業における活き餌としても盛ん に利用され(具志堅,1969),沖縄県における生 態や漁法等も盛んに研究されている(例えば川崎・ 金城,1978;川崎ほか,1979).本種の繁殖可能 な 水 域 の 北 限 は 沖 縄 島 近 海 と さ れ(Oka and Miyamoto, 2015),鹿児島県以北における本種の 標本に基づく報告は極めて少なく,種子島を北限 とする薩南諸島からのものに限られていた(畑, 2014; Hata et al., 2015). 2013 年 1 月 7 日,大隅半島東岸に位置する内 之浦湾において 1 個体のミズンが定置網により採 集された.本標本は本種の標本に基づく分布の北 限となるため,ここに報告する.