Abstract / Introduction / Summary:
外来種とは,もともとの生息地ではないところ
へ人為的に移行された生物のことである.その中
でも,オオクチバスMicropterus salmoides やブルー
ギル Lepomis macrochirus は代表的な海外からの
外来種である(中井,2000).この 2 種は食性や
環境への対応力から,外来生物法の対象種となっ
ており,全国で駆除の取り組みが行われている(鎌
田ほか,2009).生活史段階に応じた駆除方法が
開発されており,オオクチバスでは人工産卵装置
を利用した卵の除去,稚魚には三角網,成魚には
小型刺し網を用いた駆除がなされている(高橋ほ
か,2007).しかし,三角網は大人数での作業を
必要とし,刺し網の使用には専門的な技術を要す
る上に混獲の問題がある(矢野ほか,2005).人
工産卵装置は,設置と回収以外に作業を必要とし
ないが,効果的な構造や設置場所が確立されてい
るとは言い難い.また,従来のように,水底に直
接設置する人工産卵装置では設置場所の制限や,
砂礫地での効果の低さが問題になっている(小西
ほか,2012).
そこで本研究では,2002 年に竣工した松元ダ
ムに定着したオオクチバスとブルーギルに対し,
それぞれの種の成長段階の一部に適した駆除方法
を検討する.オオクチバスについては,吊下げ式
人工産卵装置の構造と設置場所による誘因効率の
比較を行うと共に,天然産卵床の捜索も行った.
吊下げ式人工産卵装置とは,フロ – トと重りを使
用し,産卵基質となる人工芝が水中で水平になる
ように設計された人工産卵装置である.ブルーギ
ルにおいては,カニ篭や大型の篭網を使用し,成
魚の段階の駆除を行った.