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西之表市馬毛島南東海域底質の粒度組成変化

藤枝 繁・日高正康・東 諭史・小川修治

Abstract / Introduction / Summary:

種子島・西之表港の西約 9.3 km に位置する馬 毛島は,無人島としては日本で 2 番目に大きく, 面積 8.20 km2,周囲 12 km,標高 71 m の平坦な 島である(日本離島センター,2004).馬毛島には, ニホンジカの亜種であるマゲジカばかりではな く,鳥類,植生,昆虫,サンゴ,海藻,魚介類, 海洋性脊椎動物等,様々な分類群で保全の重要性 が 指 摘 さ れ て い る 種 が 生 息 し て い る( 立 澤, 2003).田中(1976)によると,1947 年〜 1976 年の馬毛島周辺の海そう類の性格について「亜熱 帯性または温帯性であり,その種類も実に沢山 あって多く,その総種類は 300 種以上にも及び, この中には新種,新産種,珍稀種,未発表種等が 数十種にも達し,(中略)このような模範的な立 派な海そう生育相は恐らく九州の他の所でも見当 たらない地域であり,全く貴重な天然の植生域と 言えよう.」と記している.また肥後(1984)に よると,馬毛島東岸沖合の潜水調査の結果,この 海域は潮流がかなり早く,岩石が散在しており, サンゴ類やウミトサカ,イソギンチャク,ウニ等 が多く見られ,イセエビも所々の岩石間に見られ たと記している.馬毛島周辺海域は,トビウオの 産卵場であり,ナガラメ,イセエビ,キビナゴ, ミズイカ等の好漁場としても知られている(馬毛 島環境問題対策編集委員会,2010).しかし,現 在この島は,土地の 99% を民間企業一社に買収 され,採石工事や普天間基地移設の候補地となっ た飛行場建設のための森林伐採など,大規模な開 発が行われており(大清水,2011),土砂の海域 への流出が懸念されている. 底生生物の生息場所である海底底質は,生物 によって好みが変わり,微々たる粒度の変化で あっても大きな影響を与えることが知られている (肥後・本中野,1984,肥後・寺田,1985).2007 年 2 月に撮影された航空写真では,すでに島の特 に南半分が伐採され,ほとんど緑地がなく,地面 が露出しており(南日本新聞,2010),馬毛島の 開発による土砂の流出は,ナガラメなどの藻食性 貝類の漁獲量の激減やサンゴ群落の消失といった 問題を生じると指摘されている(馬毛島環境問題 対策編集委員会,2010). 本研究室では,2002 年,馬毛島の開発によっ て陸上部の土砂が流出している可能性があること に着目し,将来的に周辺海域の海底環境への影響 を検討するため,馬毛島南東海域 11 点において 海 底 底 質 の 試 料 採 取 を 行 っ た.2010 年 に は, 2002 年の調査と同一地点で再度試料採取を行い, 両年の表層部の粒度組成および粒度組成の鉛直変 化を比較することによって,2002 年からの 8 年 間で馬毛島東岸沖の粒度組成の変化を明らかにし た.