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鹿児島湾におけるイボニシの形態比較

齋藤元樹・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

イボニシReishia clavigera (Kuster, 1860)は,北海道南部,男鹿半島以南に分布しているアッキガイ科に属する肉食性巻貝である.従来の研究では,吉元・冨山(2014),緒方・冨山(2018)などによって生活史が報告されてきたが,複数個所でのイボニシの計測は行われていない.本研究では,イボニシのサイズ分布の調査を行い,場所ごとの形態の違いを明らかにすることを目的とした.調査は鹿児島湾内10か所から採集されたイボニシの殻標本300個体を用いた.デジタルカメラ(Canon IXY 650)で撮影した画像を,画像計測ソフト(Micro Measure)を用いて計測を行った.計測には,Kameda et al. (2007)がオキナワヤマタカマイマイ属やニッポンマ イマイ属を計測する際に用いた計測方法,Urabe (1998)がチリメンカワニナを計測する際に 用いた計測方法,冨山(1984)がタネガシママイマイを計測する際に用いた方法を使用して計測を行った.結果,変形Kameda式のユークリッド距離では地点E,F,B,A,Kと地点G,I,J,C,Hがそれぞれグループを形成した.変形Kameda式のマハラノビス距離では地点E,J,Kと地点C,H,B,A,Fがそれぞれグループを形成した.Urabe式のユークリッド距離では地点C,J,H,G,Iと地点K,A,B,E,Fがそれぞれグループを形成した.Urabe式のマハラノビスでは地点E,A,K,G,Jがグループを形成した.変形Tomiyama式ユークリッド距離では地点G,I,C,Hと地点E,F,J,B,A,Kがそれぞれグループを形成した.変形Tomiyama式マハラノビス距離では地点F,A,H,G,Kが同じグループを形成した.地理的に隣接した地点でクラスタが見られたのは,変形Kameda式のユークリッド距離のE地点とF地点,変形Kameda式のマハラノビス距離のJ地点とK地点,変形Tomiyama式のE地点とF地点,Urabe式のユークリッド距離のA地点とB地点,E地点とF地点だった.これらから一部の地域で隣接する地点でクラスタを形成することが分かった.隣接した地域でクラスタが見られなかった原因としては,イボニシの撮影の時に殻標本の角度を一定にしなかったことなどが考えられる.