アマオブネガイ科貝類は,軟体動物門腹足綱アマオブネガイ目に分類され,日本では8 属50種が報告されている.環境省のRDB 評価では,アマオブネガイ科貝類の18 種が絶滅危惧Ⅱ 類や準絶滅危惧に指定されている.海岸域(岩礁—干潟の亜潮間帯縁部— 飛沫帯)からマングローブ湿地,河川(干潮域— 淡水域上流)に生息するアマオブネガイ科貝類は,生息場所を著しく分化させており,異なる環境への多様な適応様式があると考えられる(Okuda and Nishihira, 2002).アマオブネガイ類は,熱帯・亜熱帯の汽水域に成立するマングローブ林でもよく見られる.マングローブ林は,海から林縁部の微地形,塩分や底質の水分保有量など異なる多様な環境を有しており,これらの環境変異はマングローブ林内におけるアマオブネガイ科複数種の共存において,重要な役割を果たしていると考えられる(Okuda andNishihira, 2002).
鹿児島県内では,鹿児島市喜入,種子島,屋久島,奄美大島でマングローブ林がみられ,奄美大島の住用川と役勝川に広がるマングローブ林の面積は,県内最大である.住用マングローブ林および住用湾の前浜に広がる干潟で生物調査を行った結果,マングローブ林からは鹿児島県RDB 記載種であるヒロクチカノコNeripteron cornucopiaやシマカノコNeritina turrita,ドングリカノコNeripteron violaceum,コウモリカノコNeripteron auriculatum のアマオブネガイ科貝類5 種の生息が確認されている(三浦,2012).しかし,三浦(2012)は林内のどのような場所で採集したか明記しておらず,種の保全に必要な生息環境に関する情報が含まれていない.その問題を踏まえ,住用マングローブ林内の複数の地点で見つけ取り調査を行った結果,役勝川支流と住用川支流の一部の地点で,シマカノコやヒロクチカノコ,ムラクモカノコVittina variegata などのアマオブネガイ科貝類5 種が確認された(川瀬ほか,2018).しかし,アマオブネガイ科貝類が確認された地点の環境については景観の記載に留まっており,ベントスにとって重要である底質環境については触れられていない.
そこで本研究では,アマオブネガイ科貝類が確認された地点の底質や植生の状況を調査し,マングローブ林におけるアマオブネガイ科貝類の分布特性について底質上の環境も考慮に入れて説明することを目的とした.

住用マングローブ林におけるアマオブネガイ科貝類の分布(木下そら・遠藤雅大・野村淳一朗・ 山村英雄・川瀬誉博・山本智子)