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鹿児島県桜島袴腰大正溶岩の岩礁性転石海岸におけるシマベッコウバイのサイズ頻度分布の季節変化と殻の内部生長線観察

黒木理沙・緒方李咲・奥 奈緒美・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県の桜島にある岩礁性転石海岸である袴腰海岸には,複数の肉食貝類が生息している.そのなかでもシマベッコウバイJapeuthria cingulataは普通に見られる種であるが研究対象とされた例がほとんどなく,その生態はほとんど解明されていない.そこで,本研究では,シマベッコウバイのサイズ頻度分布とシマベッコウバイの内部成長線を観察し,シマベッコウバイの生活史を明らかにすることを目的とした.調査は,桜島袴腰海岸にてシマベッコウバイを2017年12月から2018年11月の期間,各月大潮干潮時に50個体見つけ取りにて採集した.採集後,カ-ボンファイバ-ノギスを用いて計測した殻高と個体数のヒストグラムから,2月,3月,6月,7月,8月,9月にシマベッコウバイの稚貝の新規加入が確認でき,稚貝の新規加入は2月から秋にかけて行われていると推測された.測定後,乾燥した10個体のサンプルは研磨処理を行った.研磨処理後に双眼実体顕微鏡を用いて殻断面を観察したところ,内部成長線とみられる縞を確認できた.その後,エッチング処理,スンプ処理を行った後,光学顕微鏡を用いて観察した.エッチング処理では塩酸と酢酸にそれぞれ1分30秒ずつ浸けた.スンプ処理では,殻断面にスンプ液をはけで殻断面に塗りスンプ板をはり10分乾燥させた.双眼実体顕微鏡での縞の観察には成功したが,光学顕微鏡を用いての内部成長線の観察は線を数えられるほど明瞭には見えなかったため,観察は困難であった.これは,荒削りの段階で削り方が足りなかったことや削る角度によっても見え方が異なってしまったことが原因であると考えられる.今後研究するにあたって,荒削りの際に削り残しがないように気をつけることと,エッチング処理をする際に塩酸と酢酸にどのくらいの時間つけるべきか最適時間を割り出すことが必要である.内部成長線の数が数えられ,シマベッコウバイの年齢が分かればより信頼性の高いデ-タが得られると考える.