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有毒魚類ツムギハゼの九州沿岸における標本に基づく初めての記録

森下悟至・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ハゼ科ツムギハゼ属ツムギハゼYongeichthys nebulosus (Forsskål, 1775)はインド・西太平洋に広く分布し,汽水域や浅海域の砂礫および砂泥底に生息する.国内では琉球列島が主な分布域であることが知られている.(明仁ほか,2013).ツムギハゼはフグ科魚類以外では珍しく,体内にテトロドトキシンを蓄積する有毒魚類であることが知られている(Noguchi et al., 1971).沖縄・奄美地方ではツムギハゼの干物を用いて害獣駆除をおこなうこともあり,毒ハゼとして広く認知されていた(長島ほか,2013).本種の毒は生息場所や個体によって無毒のものから強毒性のものまで,毒性に大きく差があることが知られており,成熟が進むにつれて,卵巣毒量の割合が大きくなることも判明している(斎藤・杉浦,1997; Tatsuno et al., 2013).なおその毒性は強く,西表島でツムギハゼを食べたコアジサシが数分で絶命した例や,台湾ではツムギハゼによる人の食中毒被害が確認されている(長島ほか,2013;羽根田,2014). 薩摩半島沿岸における魚類相調査の過程で,薩摩半島沿岸から3個体のツムギハゼが採集された.本標本は本種の九州本土沿岸における標本に基づく初めての記録となるため,ここに報告する.