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トカラ列島諏訪之瀬島から得られたオウゴンニジギンポ

森下悟至・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

イソギンポ科ヒゲニジギンポ属Meiacanthusはインド・西太平洋から28種が知られており(Smith-Vaniz and Allen, 2011),日本国内からは4種が記録されている(藍澤・土居内,2013).このうちオウゴンニジギンポMeiacanthus atrodorsalis (Günther, 1877)は,鮮やかな色彩と優雅な泳ぎ姿からダイビングでの観察や飼育用の観賞魚として高い人気を誇る.本種は外敵から身を守るために,下顎に鋭い有毒の犬歯状歯をもつことが知られており,イナセギンポPlagiotremus laudandus (Whitley, 1961)など複数の種がオウゴンニジギンポに類似した形態を有し,ベーツ型擬態であることが知られる(瀬能,1996; Smith-Vaniz et al., 2001).鹿児島県内のオウゴンニジギンポの標本に基づく記録は,奄美群島からはあるものの(木村,2014; Nakae et al., 2018; 川間,2018; Mochida and Motomura, 2018),同群島以北からはこれまで報告されていない(Motomura et al., 2010; 本村ほか,2013; Motomura and Harazaki, 2017; 岩坪・本村,2017; 木村ほか,2017; 小枝ほか,2018). トカラ列島における魚類相調査の過程で,2018年4月26日に諏訪之瀬島切石港の南方,水深18 mから1個体のオウゴンニジギンポが採集された.本標本は本種のトカラ列島における初めての記録となるため,ここに報告する.