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鹿児島県初記録のハタ科魚類イッテンサクラダイ

田代郷国・高山真由美・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ハタ科ハナダイ亜科(Serranidae: Anthiadinae)に属するイッテンサクラダイ属Odontanthias Blee-ker, 1873は,背鰭条数が10棘12–19軟条,臀鰭軟条数が7–8(通常7),背鰭棘の後側に沿う鰭膜の先端に遊離した伸長部がある,背鰭軟条の1本以上が糸状に伸長する(短く目立たない場合もある),前鰓蓋後縁は鋸歯状で隅角部に大きな棘または鋸歯がある,舌上に歯板がある,および尾鰭が二叉型であることなどで特徴づけられる(Randall and Heemstra, 2006;White, 2011;瀬能,2013).イッテンサクラダイ属魚類は水深50–400 mの比較的深場の岩礁域に生息しており,トロールや一本釣りで稀に漁獲される程度で,各種の分布状況に関する報告も散発的で少ない.

本属魚類はインド・太平洋の熱帯から温帯域にかけて14有効種が知られている(Randall and Heemstra, 2006;White, 2011).そのうち,日本国内からは,マダラハナダイO. borbonius (Valenciennes, 1828),ハタタテダイO. flagris Yoshino and Araga, 1975,バラハナダイO. katayamai (Randall, Maugé and Plessis, 1979),ボロサクラダイO. rhodopeplus (Günther, 1872),およびイッテンサクラダイO. unimaculatus (Tanaka, 1917)の5種が記録されている(瀬能,2013). 鹿児島県における魚類相調査の過程で,大隅諸島黒島沖からトカラ列島平島北西沖にかけての海域から8個体(体長116.8–158.6 mm)のイッテンサクラダイが採集された.これらの標本は鹿児島県における本種の初記録であるため,ここに報告する.