鹿児島県の桜島にある溶岩性転石海岸である袴腰海岸には,複数の肉食貝類が生息している.そのなかでもカヤノミカニモリ Clypeomorus bifasci-ata は普通に見られる種であるが研究対象とされた例が無く,その生態はほとんど解明されていない.また,愛媛県では絶滅,沖縄県では準絶滅危惧種となっている.本研究ではその生態の解明の第一歩として,カヤノミカニモリの月ごとのサイズ頻度分布と季節ごとの密度分布の季節変動を追うことにより,その生活史の解明を試みた.季節ごとの密度調査では 5 月・ 8 月・ 10 月・ 12 月に潮間帯の中部と下部( 10 月と 12 月は下部のみ)で50 × 50 cm のコドラートをそれぞれ 5 ヶ所置き,その中に出現したカヤノミカニモリの個体数と殻高を測定した.この結果,本種は冬に岸側の密度が低下し,海側の密度が増加することから,冬には海側へ移動しているようであった.毎月のサイズ頻度分布調査では,見つけ取りで 2007 年 1 月から 2008 年 1 月の 12 回( 2007 年 3 月は欠損)潮間帯全域で貝を採集し,個体数と殻高を測定した.この結果,サイズピークは 21 mm 前後で,他に13 mm 前後の小型の個体の集団が秋に確認できた.密度調査の結果と合わせて,受精・産卵は冬の時期であることが考えられる.

桜島の火山溶岩の転石海岸におけるカヤノミカニモリ Clypeomorus bifasciata (G. B. Sowerby II, 1855) の生活史(吉田稔一・冨山清升)