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マングローブ干潟におけるキヌカツギハマシイノミガイMelampus (Micromelampus) sincaporensic Pfeiffer, 1855 とカワザンショウガイ科数種の間での生活史比較

国村真希・冨山清升・今村留美子・河野尚美

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県喜入町の愛宕川河口の干潟には,メヒ ルギ Kandelia candel やハマボウ Hibiscus hamabo からなるマングローブ林が広がっているためフト ヘナタリ C.rhizophorum A. Adams, 1855 やコゲツノ ブエ Clypeomorus coralium (Kiener, 1834),ヒメカ ノコガイ C.oualaniensis (Lesson, 1831) といったよ うな他の一般の海岸にはあまり見られない巻き貝類 が生息している.この干潟の上部には海岸棲のシバ 類であるナガミノオニシバZoysia sinica var.nipponica や ハ マ サ ジ Limonium tetragonum (Thunb.) A. A. Bullock が生育している一帯があり,そこではオ カミミガイ科に属するキヌカツギハマシイノミガ イ Melampus (Micromelampus) sincaporensic Pfeiffer, 1855 と,カワザンショウ科の数種が同所的に生 息している.キヌカツギハマシイノミガイは三河 湾以南の内湾や河口汽水域干潟のヨシ原等にすむ 雌雄同体の巻き貝であり,カワザンショウ科は汽 水産で高潮帯の草間岩れきに生息する雌雄異体の 巻き貝のグループである.キヌカツギハマシイノ ミガイは研究例が少なく,特に生態は明らかにさ れていない.本研究ではキヌカツギハマシイノミ ガイを中心として,殻高サイズ分布の季節変動を 明らかにすると同時に鹿児島湾内における生息状 況を調査することにより生活史を解明する事を目 的とした.