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口永良部島から得られたトウゴロウイワシ科魚類オオスジイソイワシ Hypoatherina barnesi

松尾 怜・木村清志

Abstract / Introduction / Summary:

ト ウ ゴ ロ ウ イ ワ シ 科 ギ ン イ ソ イ ワ シ 属 Hypoatherina 魚類は前上顎骨上向突起が細長く, その長さは幅の 2.7 倍以上であること,前上顎骨側 方突起は前後に分れ狭く高いこと,前上顎骨後縁 は細くならないこと,歯骨上縁の後端は明瞭に隆 起すること,歯骨上枝後下角は丸いこと,前鰓蓋 骨隆起縁隅角部に欠刻があること,肛門は腹鰭先 端直前から後方に位置すること,体側第 3 鱗列露 出部の高さは第 2,第 4 鱗列より高いかほぼ同じで あることにより特徴づけられ,現在 10 有効種が知 られている(Sasaki and Kimura, 2014).このうち日 本 に は オ オ ス ジ イ ソ イ ワ シ Hypoatherina barnesi Schultz in Schultz et al., 1953,オキナワトウゴロウ Hypoatherina lunata Sasaki and Kimura, 2012,トガ リ イ ソ イ ワ シ Hypoatherina panatera (Jordan and Richardson, 1908), ミ ナ ミ ギ ン イ ソ イ ワ シ Hypoatherina temminckii (Bleeker, 1854),ギンイソ イ ワ シ Hypoatherina tsurugae (Jordan and Starks, 1901) の 5 種が分布している(Sasaki and Kimura, 2014). オオスジイソイワシは Sasaki and Kimura(2014) によって日本における分布が明らかにされ,これ までは奄美群島を含む琉球列島からのみ知られて いた.2016 年 10 月 3 日から 11 日にかけて広島 大学生物生産学部附属練習船豊潮丸を用いて,大 隅諸島口永良部島で行われた魚類相調査で 9 個体 のオオスジイソイワシが採集された.これらの標 本は大隅諸島における本種の標本に基づく初記録 であると同時に,本種の北限記録となるのでここ に報告する.