イシサンゴ目の中には,サンゴ礁などで目に する褐虫藻を共生させた有藻性イシサンゴ類とは 異なり,共生藻をもたず深場に生息するものもい る.このようなサンゴは,一般に目にする機会は 少ないが,しばしば底曳網漁などで混獲されるこ とがあり,薩摩半島沖でも,水深 400 m 付近の砂 底を曳くヒゲナガエビ漁で見られることがある. デルタチョウジガイ属 Deltocyathus は,従来 チョウジガイ科 Caryophylliidae に属していたが, Kitahara et al. (2013) によって分子系統学と形態学 の両面から再検討が行われ,新たにデルタチョウ ジ ガ イ 属 Deltocyathus 一 属 か ら な る Deltocyathiidae として科の再定義が行われた.世 界中で 25 種が知られており,そのほとんどが, 水深 200 m を超える深海に生息している(Kitahara and Cairns, 2009).日本では,ギンカデルタチョ ウジガイ D. magnificus Moseley, 1876,コザラデル タ チ ョ ウ ジ ガ イ D. vaughani Yabe and Eguchi, 1932,ハナザラデルタチョウジガイ D. rotulus (Alcock, 1898) の 3 種が知られている(小川・高橋, 2000).これらのうちギンカデルタチョウジガイ は,和名ギンカサンゴとして古くから知られてい たが,隔壁(septa)と杭状葉の融合部分が三角 州のような形に成長するという骨格の特徴によっ て,属名の新称と合わせて改称された(小川・高 橋,2000).本属の中では最も大型になり,国内 では,これまで本州,九州,および琉球列島北部 の水深 88−1500 m から報告されている(Cairns and Zibrowius, 1997). 鹿児島県出水郡長島町の沖合底曳網において, 2015 年 10 月 21 日と 23 日に計 5 個体のギンカデ ルタチョウジガイが採集された.これまで本県沿 岸では,佐多岬沖 219 m,種子島沖 208 m からの 報告があるが(Yabe and Eguchi, 1937),それ以降 の記録はなく,実に 78 年ぶりの確認となるため, ここに報告する.また,採集された 5 個体のうち, 3 個体は現在も生存しており,飼育記録も合わせ て紹介する.

鹿児島県長島沖から得られたギンカデルタチョウジガイ Deltocyathus magnificus Moseley, 1876 (イシサンゴ目:Deltocyathiidae)の記録(出羽尚子・西田和記)