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喜界島における陸産貝類の分布状況

藤木健太・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

奄美群島に属する喜界島は,キカイオオシマ マイマイなどの固有の陸産貝類が生息しているこ とが明らかにされており,鹿児島県内の陸産貝類 の分布状況を把握する上では欠かすことのできな い,大変重要な場所であるが,近年は畑地や道路 の開発により,それらの生息環境の減少と悪化が 進んでいることが,石田ほか(2004)によって示 唆されている.本研究は,喜界島での陸産貝類の 採集調査を 5 月と 9 月の 2 回にわたって行い,採 集された種数と生息場所の傾向を考察することに よって,現在の喜界島における陸産貝類の生息状 況を明らかにすることを目的とした.調査は,1 回目を 2015 年 5 月 5–7 日の間,2 回目を 2015 年 9 月 29–30 日の間に,喜界島内に定めた 7 つの地 点で陸産貝類の採集を行った.大型~小型の個体 は見つけ取りで採集し,微小種は,それぞれの地 点から約 1L の土壌を持ち帰り,研究室内で乾燥 させ、ふるいにかけたものを顕微鏡で観察し,ピ ンセットを用いて取り出しガラス管中に保存し た.見つけ取りで採集したものは,煮沸して肉抜 きをした後,エタノール中に保存した.得られた サンプルのデータを基に,二つの地点同士におけ る類似度を算出した.類似度を求めるにあたり, 野村・Simpson 指数を用いた.また,算出された 類似度から Mountford 法を用いて,類似デンドロ グラムを作成した.結果として 16 種の陸産貝類 が採集されたが,そのうち 10 種が土壌中から採 集された微小貝であった.今回の調査では,森林 が残っている地点に多くの種数の陸産貝類が産す る傾向が見られ,喜界島の陸産貝類の多くが,森 林環境に依存し,それらの減少や分断が個体数の 減少に繋がっている可能性が高いと推測された.