本研究の調査地とした鹿児島県鹿児島市街地 地域は,九州の南西端,東に内湾である錦江湾を 臨む地域である.市内にある多くの公園内や住宅 近くにも自然林が今なお見受けられる地域でもあ る.しかし,県内の離島などに比べ鹿児島本土に おける調査 ( 主にその地点に生息する生物群の種 多様度 ) はほとんどなされておらず,特に,鹿児 島市街地域の陸産貝類相の調査は詳しく行われて いない.そこで本研究では,鹿児島県レッドデー タブックに記載されている種も重要な調査対象の 一つとして,鹿児島市街地域の自然林で見られる 陸産貝類相の多様性を調査し,それをもとに鹿児 島市内の陸産貝類の特徴や地点間の相違点を明ら かにすることを目的とした. 本調査は,鹿児島市内の神社・公園の自然林 9 地点にて主に土壌中,もしくは土の上に生息して いる陸産貝類の採集を行った.採集した陸産貝類 は必要な処理を行った後に同定,種別にラベルを つけ保存した.その後地点ごとに多様度指数と類 似度指数,群分析を行った. 鹿児島市内の自然林が見られる神社や公園 9 地点において,調査及び同定作業の結果,柄眼目 12 種,中腹足目 6 種,足襞目 1 種の合計 19 種の 陸産貝類が採集された.9 地点のうち最も種数が 多く見られたのは Pt. 7 の城山公園であり,合計 10 種が採集された.最も種数が少なかったのは Pt. 1 の烏帽子嶽神社で,柄眼目と中腹足目がそ れぞれ 1 種ずつしか確認できなかった.また,鹿 児島県のレッドデータブックの中の〈鹿児島県の カテゴリー区分定義〉に基づき,発見された各種 の希少度評価を行ったところ,絶滅危惧 II 類 2 種, 準絶滅危惧 6 種,消滅危惧 II 類 4 種,準消滅危 惧 5 種,分布特性上重要 2 種が確認できた. 本調査の結果は,レッドデータブックに記載 されている種において,生息環境の比較的良好で はない都市近郊では多く確認できないだろうとい う予想とは異なり,多くの種が確認できた.その 要因として,都市地域内の自然林保護区の指定, 陸産貝類をエサとする野生の大型哺乳類の生息が 認められないこと等が挙げられる.しかし,この 結果の信憑性を高めるためには,本調査のみなら ず,さらなる細かいサンプリング,情報の集積が 望まれる.

鹿児島市街地域における陸産貝類の分布(鮒田理人・今村隼人・竹平志穂・中山弘章・坂井礼子・冨山清升)