奄美群島を含む南西諸島では,奄美・琉球地 域の世界自然遺産登録に向けた活動が国や県ばか りでなく,地域住民にまで広がりつつある(鹿児 島県,2014a).その中で,奄美群島では,道路網 の整備など奄美大島の開発が進むのに比べ,住民 が少なく,渡航にも時間のかかる加計呂麻島や喜 界島では固有の生物相が今でも残されていると考 えられる.特に,陸域に比べ,研究者の少ない海 岸域や海洋の生物相は近年になってやっと保全の 目が向けられ始めたに過ぎず(鹿児島県,2003, 2014b),防災対策の護岸工事などが進展する前に 現状を把握しておくことが急務であろう. 筆者らは宮崎県の熊野江川河口干潟から記載 報告されたクマノエミオスジガニ Deiratonotus kaoriae Miura, Kawane et Wada, 2007 の分布を調査 する目的で,九州や四国の各地で生物相調査を開 始した(Miura et al., 2007;三浦,2008).奄美群 島の海岸湿地あるいは汽水域においては 2008 年 以来,調査を続けたが,当初の目的は達せられず, 回を重ねる度に一般的な底生生物調査に変貌し た.その一部である住用川周辺汽水域の調査結果 に関しては本誌 38 号で紹介した(三浦,2012). ここでは,加計呂麻島に関する底生生物の知見を 紹介し,奄美群島の底生生物に関する知見の充実 を願うものである.

加計呂麻島の海岸湿地に生息する甲殻類と貝類の記録(三浦知之・三浦要)