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桜島袴腰海岸潮間帯における肉食性巻貝類5 種の生活史と生態

吉元 健・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

シマベッコウバイ Japeuthria cingulate (Reeve, 1847),シマレイシダマシMarula musiva (Kiener, 1834),イボニシThais clavigera (Kuster, 1860),ウネレイシダマシ Cronia margariticola (Broderip, 1833),カヤノミカニモリClypemorus bifasciata (Sowerby, 1822) の5 種は桜島袴腰海岸 に生息する肉食性の巻貝である.これらの巻貝に ついて,過去の研究によって分布などは明らかに なっているが,種間の棲み分けなどの群集生態学 的側面は明らかになっていない.本研究では5 種 の殻長サイズ頻度分布の季節変動,垂直分布の移 動性から生活史を明らかにし,調査地において基 本生態を比較することを目的とした. 2013 年1 月から2013 年12 月まで桜島袴腰海 岸の潮間帯において,5 種を採取した.サイズ頻 度分布の結果から,シマベッコウバイは夏から冬, イボニシは秋から冬,ウネレイシダマシは年に複 数回,カヤノミカニモリは夏に繁殖が行われてい ると推定した.垂直分布の様子から,各種の生息 個体数が多い範囲は潮間帯において種間で異なる 結果となった.シマベッコウバイは潮間帯中部か ら下部にかけて,ウネレイシダマシは主に下部に, カヤノミカニモリは上部に,シマレイシダマシは 3 月と7 月は主に下部に,11 月は上部と下部に個 体群が分かれた.これは調査地において4 種が棲 み分けを行っている可能性を示唆した.ベルト調 査におけるサイズ構成においては,各種で小型の サイズが多く生息する場所がわかった.これは各 種で繁殖や稚貝定着のために移動を行っているこ とを示唆している.またウネレイシダマシは下部 より,中部と上部のサイズが大きくなる傾向が あった.シマレイシダマシは11 月に上部に個体 数が多くなる傾向もあったことから,種の移動は 繁殖,稚貝定着のために限らず,乾燥耐性の影響, 捕食‐被食の関係による影響も一要因となって いる可能性が考えられる.