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南九州におけるモンスズメバチの多産地

河野太祐・山根正気

Abstract / Introduction / Summary:

モンスズメバチ Vespa crabro Linnaeus は旧北区 に広く分布する中型のスズメバチであり,北米に も移入個体群が知られる(Archer, 2012; Kimsey and Carpenter, 2012).国内では,北海道から九州 まで広く分布することが知られるが,九州におけ る生息地に関する情報は乏しい.鹿児島県では, 長瀬(1982)が 1978 年からあしかけ 5 年間有剣 ハチ類の分布を調べたが本種を記録していない. その後のおよそ 30 年間も本種の記録は皆無で あったが,2009 年に県北部の姶良町からベイト トラップによって1個体が得られた(渡邊ほか, 2009). 筆者らは昨年,宮崎県えびの市の沢原高原に おいて本種の多産地を確認した.この生息地では, わずか半日の調査にもかかわらず,南九州に分布 するスズメバチ属全種が得られた.また沢原高原 の鹿児島県側(湧水町)においてもモンススメバ チの生息が確認された.沢原高原はスズメバチ類 の保全にとって極めて貴重な地域であると考えら れたので,同地域におけるモンスズメバチおよび 他のスズメバチ属の生息状況を簡単に報告する.