/ 038-005

鹿児島県に生息するウミシダ類と共生生物群集の記録

三浦知之

Abstract / Introduction / Summary:

棘皮動物のウミシダ類は,Kogo (1998, 2002) 等 の分類研究によって,日本近海から約 150 種が確 認され,色彩の変化に富み,海中でも目立つため, 水中写真の被写体としてダイバーにも人気があ る.棘皮動物はナマコ,ウニ,ヒトデなど多様な 形態を示すが,五放射の基本的体制に統一性があ る.ウミシダ類では,体中央の半球状の冠に消化 管があり,その上部に口と肛門が開く.冠から放 射状に腕が生じ,多数の節に分かれる.腕の両側 には羽枝が分岐し,羽枝上面の細い溝には,管足 と繊毛がある.体の背面には根のような巻枝があ り,海底の基盤に固着する. 棘皮動物には,共生する動物が多数知られて おり,ウミシダ類も例外ではなく,長い腕と分岐 した羽枝により水中にできあがる数十 cm の空間 には,多種多様な生物が生息し,独特な生物群集 を形成する.共生生物に関する研究は多いが,そ のほとんどは一部の分類群だけを扱っており (Eeckhaut & Jangoux, 1993; Meyer, 1985; Vanden- Spiegel et al., 1998; 林・本間,2004; 寺塚・本尾, 2011 など),すべてを論じた研究はきわめて少な い(Clark, 1931; Zmarzly, 1984). そこで,本研究では,ウミシダ類に共生する すべての動物とその季節的変化を調べるため,1 地点,すなわち鹿児島湾袴越海岸において定期的 な採集調査を複数月に渡って行い,さらに鹿児島 県内の他の4地点においても 1 回の調査を実施 し,鹿児島県内に生息する代表的なウミシダ類と その共生生物について種組成および宿主による特 異性などを解析した.