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鹿児島県から得られたヒメ科エソダマシ Aulopus damasi の記録

畑 晴陵・伊東正英・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

ヒメ科魚類 Aulopidae は世界で 2 属約 10 種が 知られており(Nelson, 2006),日本近海にはエソ ダマシ Aulopus damasi Tanaka, 1915,イトヒキヒ メ A. formosanus Lee and Chao, 1994,ヒメ A. japo- nicus (Günther, 1877),ハタタテヒメ Aulopus sp. の 4 種 が 分 布 す る(Nakabo, 2002; 松 沼 ほ か, 2008). Aulopus damasi は伊豆沖から採集されたとされ る全長 330 mm の 1 標本に基づき Tanaka (1915) によって新種記載され,同時に和名エソダマシ(狗 母魚欺)が提唱された.その後,山川(1984)は 沖縄近海の水深 250–508 m から採集された本種 5 個 体(HUMZ 48382, 95119, 95120, BSKU 53000, URM–P 3787,体長 153–257 mm)を報告し,益 田ほか(1988)は本種 3 個体を沖縄本島近海から, 山川(2002)は高知県土佐清水から,山田ほか (2007)は宮古島北方の大陸斜面上から 1 個体 (SNFR 152,体長 310 mm)をそれぞれ報告した. したがって,現在エソダマシの国内における分布 は,伊豆沖,高知沖,沖縄近海,東シナ海とされ ている(Nakabo, 2002;山田ほか,2007). 2011 年 11 月 20 日に鹿児島県南さつま市坊津 沖で,エソダマシと同定される 1 個体が採集され た.本標本は鹿児島県におけるエソダマシの標本 に基づく初めての記録となるため,ここに報告す る.