有史以来,人類の移動・分散や遠隔地間での交 易は,意図の有無にかかわらずおびただしい数の 生物に,本来の分布域から離れ新天地に到達する 機会をもたらしてきた.人為的に移入された生物 の多くは新たな環境に適応できなかったり,時を 同じくして同じ場所に到達した同種個体(すなわ ち繁殖集団や種社会創設のためのパートナー)の 数が少な過ぎたりして,ほどなくして姿を消して いった。しかしながらその一方で,特に近年では 輸送規模の拡大や輸送頻度の上昇,あるいは地球 温暖化に象徴される到達先の環境の変化などから か,外来性の生物が繁殖集団(以下,外来個体群) として野外で定着してしまう事例も決して少なく はなくなっている.このような外来個体群の形成 はわが国を含む世界各地で,往々にしてその土地 特有の食物網や在来個体群の遺伝子組成の変化を 引き起こし,結果として生態系・生物多様性に深 刻な影響をもたらしている(川道ほか,2001; 日 本生態学会,2002).またこうした外来個体群の 形成は,経緯を記述した文献証拠の欠落や喪失, さらには移入・定着からの時間経過に伴う地元住 民の世代交代に伴い,舞台となっている地域その ものに対して想定される地史や生物地理学的位置 づけに関して,深刻な錯誤要因となることも懸念 される [ たとえば Sato and Ota (1999)].外来個体 群のもたらす在来の生態系・生物多様性への影響 や学術上の錯誤要因を避けるためには,その分布・ 生息状況を可能な限り早期に把握して記録すると ともに,除去等の対策を迅速に講じることが重要 である(日本生態学会,2002). われわれは最近,鹿児島県本土部の南部(指宿 市及とその周辺)で目撃・捕獲情報が相次いだ琉 球列島と台湾の固有種キノボリトカゲ Japalura polygonata [ たとえば中間(2008), 後藤(私信,詳 細は後述)など ] を対象に,その起源や,定着の 有無をはじめとする生息状況について,上記の事 項を念頭に情報の収集を行った.ここにその結果 を報告する.

鹿児島県本土部における国内外来種オキナワキノボリトカゲ Japalura polygonata polygonata (Hallowell, 1861) (爬虫綱 , アガマ科)の生息状況(太田英利・那須哲夫・末吉豊文・星野一三雄・森田哲夫・岩本俊孝)