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大隅諸島以北の鹿児島県におけるカレイ目魚類相

大橋祐太・本村浩之

Abstract / Introduction / Summary:

カレイ目魚類は世界で 14 科 134 属 678 種が確 認されており (Nelson, 2006),日本では 8 科 56 属 130 種 が 知 ら れ て い る ( 中 坊,2000; 山 田, 2000;Senou et al., 2002; 尼 岡 ほ か,2004;Ran- dall and Senou, 2007;Amaoka et al., 2008;Yoko- gawa et al., 2008;Munroe and Hashimoto, 2008; Suzuki et al., 2009).カレイ目魚類は左右非対称の 魚体を持ち,両眼が片方の体側に寄ることが最大 の特徴である. 鹿児島県は南北に約 600 km と長く,鹿児島県 の北西部に位置する獅子島から奄美群島に属する 与論島にまで及び,九州南部と琉球列島の大半を 含む.したがって,鹿児島県には八代海,東シナ 海,鹿児島湾,太平洋と様々な海域が含まれ,そ れぞれの海域に面する地域によって水深,海水温, 底質など海洋環境が大きく異なる.また,鹿児島 県には 2 つの生物地理区があり,鹿児島県本土や 大隅諸島は旧北区に,奄美群島は東洋区に含まれ る.そのため,鹿児島県では熱帯・亜熱帯性から 温帯性までさまざまな生物が分布しており,それ らの分布の南限あるいは北限となっている例が多 い(本村,2011).そのため,鹿児島県の魚類相 を明らかにすることは,南日本における魚類の多 様性を知るうえできわめて重要であると言える. これまでの鹿児島県におけるカレイ目魚類の 研究として,ヒラメ Paralichthys olivaceus など有 用魚種を対象とした資源学的研究が広く行われて いる.しかし,カレイ目魚類を幅広く扱った魚類 相調査は行われていない.過去に行われた鹿児島 県内における魚類相調査(今井・中原,1969;市 川ほか,1992)においてもカレイ目魚類の報告は 少なく,鹿児島県内におけるカレイ目魚類全般の 分布状況は明らかにされていない. また,カレイ目魚類には形態的に類似した種 が多く,水中写真やフィールドでの目視などに基 づく調査では精度が高い同定を行うことが困難で ある.カレイ目魚類の正確な種同定を行うために は標本が必要であるが,鹿児島県においては,こ れまでに標本に基づいたカレイ目魚類の分布調査 はされていない. そこで,本研究では鹿児島県北西部に位置す る獅子島から大隅諸島までの調査地として,カレ イ目魚類相を調査した.標本に基づいた正確な種 の同定を行うとともに,今後の分類学的研究に寄 与するために各種の記載を行った.