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与論島の淡水産甲殻類について

鈴木廣志・龍野勝志・竹 盛窪

Abstract / Introduction / Summary:

南西諸島の中央部に位置する与論島は隆起礁 原の島で,表面水系もほとんどなく,湧水域もあ まり知られていない島である.そのため,淡水域 の生物相,特に十脚甲殻類についてはほとんど研 究されていなかった.しかしながら,本島南東部 に位置するインジャゴの湧水においてシマチスジ ノリ Thorea gaudichaudii C. Agardh の生育が確認 される(洲澤.他,2010)など,近年,本島湧水 部の生物相に注目が示されるようになった. 著者らは,2011 年 2 月に与論島全島の湧水域 を対象とした甲殻類生息調査を予備的に実施し, 鹿 児 島 県 版 レ ッ ド デ ー タ ブ ッ ク( 鹿 児 島 県, 2003)で絶滅危惧 II 類,環境省レッドデータブッ ク(環境省,2006)で準絶滅危惧種(NT)に指 定 さ れ て い る サ キ シ マ ヌ マ エ ビ Caridina sakishimensis Fujino & Shokita を含む淡水産甲殻類 の生息を確認したので,ここにその概略を報告す る.  材料と方法 調査は,2011 年 2 月 26 日に与論島の幹線道路 脇の水溜り,根津栄,インジャゴ,前浜,ウマン コ,シゴーの 6 地点の陸水域で行った. 採集には,間口 25 cm,目合い 1 mm のタモ網 を用い,石の下や裏側,コンクリートの壁面,植 物の根や水草内を中心に採集した.採集したエビ 類は一部を種の同定のために持ち帰り,そのほか は観察後放流した.