自然保護は環境政策の根幹を担うのみならず,人類の幸福の根源に関わる重要な問題である.自然保護の視点は従来の景観から生態系へと変化し,自然保護地域における問題要因も従来の開発圧や観光等による利用圧に加え,外来種移入問題や気候変動による影響,里地里山におけるアンダーユースなど多様化,複雑化している.これら問題要因に対して,生態学のみならず,法学や経済学の見地からも有用な提言がなされているが,これら提言を汲み取る制度枠組みが確立されていない点が課題だといえる.また,複雑かつ高密度な土地利用のなされてきた日本の自然保護地域においては,制度実行にあたり関係省庁や地域住民などの合意形成が不可欠となるが,合意形成メカニズムが確立されていなかったために,問題要因への対処が遅れる例が過去に多く見られた.これらの観点からも,各分野における知見を統合し,政策に反映する枠組みや合意形成メカニズムの研究といった政策学接近が自然保護には求められていると言えよう.本稿では政策学の視点から「自然保護ガバナンス」という考え方を提唱する.

自然保護ガバナンスの考え方(田中俊徳)