Abstract / Introduction / Summary:

2025年4月に鹿児島大学練習船「南星丸」によるスミスマッキンタイヤ式採泥器(Fig. 1)を用いた鹿児島湾の底生生物相調査が行われ,2個体のクサハゼVanderhorstia sp. sensu Akihito et al. (2000) が採集された.スミスマッキンタイヤ式採泥器は,主に海底表面や堆積物中に生息するベントスを採集するために広く用いられている採泥器の一種である(Smith and Mclntyre, 1954;香月ほか,2019).採泥機が接した範囲の底質ごと生物を採集するという特性上,魚類は泳いで逃げることが可能なため,一般的に採集されることは少なく, その報告例も底生魚類でわずかに存在するに過ぎない(Okiyama, 2001, 2008; Komai, 2017).クサハゼは国内では千葉県から八重山諸島にかけてと小笠原諸島に分布するヤツシハゼ属Vanderhorstia Smith, 1949の一種であり,九州沿岸においては日向灘と薩摩半島西岸から報告されている(Iwatsuki et al., 2017;佐藤ほか,2023).本研究ではスミスマッキンタイヤ式採泥器による魚類採集の稀有な例として,鹿児島湾初記録のクサハゼを報告する.