Abstract / Introduction / Summary:
ダイダイイソミミズハゼLuciogobius yubai Ikeda, Tamada and Hirashima, 2019 は渋川ほか(2019)により和名提唱,Ikeda et al. (2019) により新種記載が行われたミミズハゼ属Luciogobius Gill, 1859 の小型魚類であり,眼下にヒゲ状の突起をもち,生時オレンジ色の色彩を呈することで特徴付けられる(渋川ほか,2019;Ikeda et al., 2019).本種は日本沿岸からのみ知られ,静岡県から鹿児島湾にかけての潮間帯から採集・報告されている(渋川ほか,2019;Ikeda et al., 2019;是枝ほか,2020a;斉藤・難波,2022).本種の生息環境は環境が良好に保たれた岩礁性海岸であり, 土砂流入や護岸工事,および地下水減少による影響の問題から和歌山県では生息地が危機的状況にあると判断され,準絶滅危惧種に選定されている(平嶋,2022).
2024 年5 月5 日に鹿児島県北薩地域にあたる天草諸島長島で行われた魚類調査の過程で,1 個体のダイダイイソミミズハゼが採集された.九州および周辺離島において本種はこれまでに鹿児島湾北部からのみ報告されており,採集された個体は天草諸島からの初記録である.また,鹿児島湾におけるダイダイイソミミズハゼの唯一の生息地は道路拡張に伴う護岸工事の最中であり(是枝ほか,2020a, b, 2023),今後の同所における個体群への影響が懸念される.本種に関する基礎的な知見の集積を目的とし,ここに報告する.