/ 045-020

鹿児島県喜入町と市来町の干潟におけるウミニナBatillaria multiformisのサイズ頻度分布の季節変化と生活史比較

安永洋子・冨山清升・井上康介・国村真希・田上英憲

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県喜入町の愛宕川河口干潟には,ウミニナBatillaria multiformis (Lischke),カワアイCerithideopsilla djadjariensis (K. Martin),へナタリCerithideopsilla cingulata (Gmelin),フトへナタリCerithidea rhizophorarum (A. Admas)の4種のウミニナ類の巻貝が生息している.ウミニナは,北海道以南に分布するウミニナ科に属する巻貝であり,泥中に紐状の卵鞘を産み,ベリジャー幼生が孵化するプランクトン発生の生活史をとる.これまで,ウミニナについては,発生様式,生態分布については研究されてきたが新規加入時期などの生活史についてはあまり研究されていない.本研究ではウミニナの生活史を明らかにするのを目的の1つとして,鹿児島県喜入町愛宕川と,鹿児島県いちき串木野市大里川の2つの異なる環境での生息密度の比較を行うとともに,喜入町愛宕川ではウミニナのサイズ頻度分布の季節的変化についても調査した.

サイズ頻度分布調査は毎月行い,愛宕川の河口干潟において,干潮時に,目視でウミニナをランダムに100個体以上採取し,殻高をノギスを用いて0.1 mm単位で計測した.

その結果,1年を通して喜入では15.1–18 mmをサイズピークとする一山型のグラフであり,9月に10 mm前後の幼貝が現れ,9–11月まで二山型のグラフとなった.12月には4.1–5 mmの個体が現れ,三山型のグラフとなった.9月に現れた個体は9.1–10 mmにあったサイズピークが12月にかけて11.1–12 mmに成長すると予測された.また,2007年9月の各調査地におけるウミニナのサイズ頻度分布調査では,喜入では16.1–17 mmをサイズピークとする山型のグラフであり,平均個体サイズは16.8 mmとなった.市来では10.1–11 mmをサイズピークとするグラフで,平均個体サイズは15.01 mmとなった. 生息密度調査では2007年9月に1回,各調査地において50 cm × 50 cm区画をランダムに10区画用意し,区画内の目視可能なウミニナの出現個体数を記録した.その結果,10区画の生息密度の平均が喜入では56.9個体,市来では97.5個体と,喜入よりも市来のほうが生息密度が高く,密度差も高いという結果が得られた.