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鹿児島県と宮崎県の県境における陸産貝類の分布

田口晃平・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

南九州地方に位置する鹿児島県は,年間を通 し,日本列島の中でも気候が温暖である.また, 数多くの自然にも恵まれ,生物多様性も豊かな地 域である.その中で陸産貝類は移動範囲が狭く, その地域の生物多様性を測る指標ともなってい る. 鹿児島県では,薩摩半島では陸産貝類の調査 が比較的多く行われているが,大隅半島では調査 があまり進められていない状況である.そこで, 本研究は大隅半島の中でも,研究報告の少ない鹿 児島県と宮崎県との県境に焦点を当て,新たな研 究報告を加えることを目的とした. 今回は,鹿児島県曽於市で 5 地点,宮崎県都 城市で 5 地点の計 10 地点において陸産貝類の分 布調査を行った.また,分布調査を行うと共に, 変形シンプソンの多様度指数を利用した調査地点 毎の多様度指数,及び野村・シンプソン指数を利 用した調査地点間での類似度を算出した.類似度 については,クラスター分析を利用しデンドログ ラムを作成した. 10 地点での陸産貝類の分布調査の結果,9 科 23 属 26 種,計 174 個体の陸産貝類を採集した. 26 種の中で,最も多くの地点で見られたのは 6 地点で採集されたタカチホマイマイ,ミジンヤマ タニシ,ヤマクルマガイであった.個体数から見 ると,ヒダリマキゴマガイが 31 個体と最も多く 採集され,次いでタカチホマイマイが 19 個体と 多かった.地点毎に見てみると,稲妻森林公園で 14 種と最も多くの種数が採集され,次いで悠久 の森が 13 種と多かった. 今回の調査で,多くの個体数が採集されたヒ ダリマキゴマガイ及びタカチホマイマイについて は,鹿児島県全体で広く分布していると言えるだ ろう.1 地点で 1 個体のみ採集できたシリブトゴ マガイについては,大隅地方北部での記録は初め てとなる.調査地点を増やしていけば,霧島地方 や宮崎県方面で採集できるのではないかと考えら れる.個体数,種数共に多く採集できた稲妻森林 公園,悠久の森については,キセルガイ科が多く 採集できたからだと考えられる.その他の要因と しては,どちらの環境も自然が多く残っており, 光も程よく差し込んでいたことが挙げられる. 今回の調査は,県境における陸産貝類の分布 状況を示すことであったが,調査地点を曽於市と 都城市と限定していたために,全ての分布状況が 明らかにはなっていない.今後は,他の県境でも 調査を行い,レッドデータブックや今回の調査と 比較していくことが必要になってくるであろう.