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鹿児島県薩摩半島南部における淡水産貝類の分布

福島聡馬・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

鹿児島県は南北 600 km にも及ぶ広大な県土を 有し,緑豊かな森林や美しい海岸線,多様な野生 動植物など美しく豊かな自然に恵まれている.そ の中で,淡水産貝類の絶滅危惧種や移入種などの 鹿児島県内での詳しい分布は知られていない.本 研究は,淡水産貝類に焦点を当てて薩摩半島南部 での分布調査を行った. 2015 年 1 月から 11 月まで,薩摩半島南部を中 心に,26 地点において淡水産貝類を採集した. 調査地へは自動車で赴き,河川や用水路,水田を 中心に採集を行った.採集は主に見つけ取り採集 法を用いた.また,底の砂泥や草木を採集ビニル 袋に詰め,研究室へ持ち帰り,トレーに広げて, ソーティングにより,小型の貝を採集した.生き ている貝は茹でて,肉抜きした.軟体部は 100% エタノールに溶液標本として保存した.殻は同定 した後,ビニル袋に入れて保存した.以上の作業 終了後,類似度やデンドログラムを作成し,デー タ解析を行った. 26 地点の調査の結果,計 8 科 10 属 10 種,216 個体の貝類を採集した.各調査地点において,種 数をみると,南九州市の永里川の用水路で最も多 い 5 種を確認した.採集された種のうち,環境省 カテゴリーの準絶滅危惧種は 1 種,鹿児島県カテ ゴリーの準絶滅危惧種は5 種,外来種は3 種であっ た. 今回,県域準絶滅危惧種のタケノコカワニナ・ フネアマガイ・モノアラガイ・ドブガイの 4 種は 1 カ所のみでしか採集できなかった.タケノコカ ワニナ・フネアマガイの 2 種については,本来汽 水域に生息する種のためほとんど採集できなかっ たと考えられる.モノアラガイ・ドブガイについ ては,Pt Z 鰻池のみで採集することができた.こ の 2 種は環境の変化に弱いため,鰻池では生存で きる環境が整っていると考えられる. 外来種については,サカマキガイ・スクミリ ンゴガイ・タイリクシジミの 3 種が採集された. 本調査より,サカマキガイについては南九州市の 南側にはほとんど侵入していないと考えられる. また,スクミリンゴガイについては指宿,南九州 市の南側,鹿児島市の南側にはほとんど侵入して いないと考えられる.