Abstract / Introduction / Summary:
ヘコアユ科 Centriscidae は極端に側扁し,甲板
で 被 わ れ た 半 透 明 の 体 を も つ( 荒 賀,1984;
Allen and Erdmann, 2012).体の後端の棘は背鰭の
第 1 棘で,その下方に背鰭軟条部や尾鰭がある特
殊な形態をもつ.本科魚類はサンゴ礁域や内湾の
砂泥域に生息し,常に頭部を下に直立して群泳す
る特異的な生態が知られている(荒賀,1984;
Allen and Erdmann, 2012).
Mohe (1937) はヘコアユ科の再検討をおこない,
Centriscus 属のみを有効とする 1 属 4 種に整理し
た. し か し, そ の 後 の ほ と ん ど の 研 究 者 は
Aeoliscus 属を有効として2 属4 種を認めており(松
原,1955;Fritzsche and Thiesfeld, 1999; Allen and
Erdmann, 2012 など),日本のヘコアユ科もヘコア
ユ属ヘコアユ Aeoliscus strigatus (Günther, 1861) と
ヨ ロ イ ウ オ 属 ヨ ロ イ ウ オ Centriscus scutatus
Linnaeus, 1758 の 2 属 2 種としてあつかわれてい
る(荒賀,1997;瀬能,2013 など).ヨロイウオ
はサンゴ礁性であるヘコアユと比較して,内湾性
であることが知られている(益田ほか,1975;荒
賀,1984, 1997).これまで日本国内におけるヨロ
イウオの記録は,千葉県館山湾,和歌山県串本,
高知県,および沖縄島に限られ,いずれも稀であ
るとされる(田中,1982;瀬能,2013).
近年,鹿児島県の薩摩半島の西岸に位置する
南さつま市笠沙町沖および大隅半島の東岸に位置
する肝付町高山沖からヨロイウオ 8 個体が採集さ
れた.これらの標本は九州沿岸域における本種の
初めての記録となるため,ここに報告する.