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桜島大正熔岩転石海岸におけるシマベッコウバイの ω指数を用いた同所的共存の生態学的分析

當山真澄・冨山清升

Abstract / Introduction / Summary:

新腹足目エゾバイ科に属する肉食性のシマ ベッコウバイ Japeuthrza cingulata (Reeve) は,特 に腐肉食性が強い巻貝で,潮間帯の岩礁に生息し ている.伊豆諸島以南・西太平洋に分布し,夜行 性である.このシマベッコウバイは,少なくとも 4 年間生きること,1 年で 13 mm,2 年で 20 mm, 3 年で 26.5 mm に成長すること(Ota and Tokeshi, 2002)が報告されている.また,シマベッコウバ イや同属のイソニナについての研究例としては, Takada and Kikuchi (1990, 1991) や大田ほか(1996) による,他の軟体動物を含めた潮間帯での生息分 布の報告例がある.Ota and Tokeshi (2000) は同所 的に生息するシマベッコウバイとイソニナの食性 と生長に関して報告した.しかし,まだ生態学的 な研究は少なく,新規個体の加入時期などまだ はっきりと確認されていないことが多い. そこで鹿児島市桜島町の袴腰海岸で,さらに, サイズ頻度分布調査,生息密度調査を行うことに よって,シマベッコウバイの生活史と垂直分布を 調査した.同様な研究を鎌田(2000),鎌田ほか (2001, 2002)は,サイズ測定を殻幅で行っている が,今回は殻高で行った.しかし,鎌田(2000) の報告で,殻幅と殻高は相関関係が証明されたの で比較も可能であった.また,袴腰海岸には古腹 足目ニシキウズガイ科に属するイシダタミガイ Monodonta labio confusa や吸腔目オニノツノガイ 科に属するカヤノミカニモリも多く生息してい る.イシダタミガイは,藻食性の巻貝で北海道以 南に分布し,潮間帯の岩礫の間に生息する.カヤ ノミカニモリは肉食性の巻貝で房総半島以南に分 布し,潮間帯の岩の隙間や転石の下,砂の中にか たまって生息する.この 3 種は,同所的に生息す ることも多いので,季節ごとに ω 指数(Iwao, 1977)を用いて分布の重なり度を求めることで, シマベッコウバイシダタミガイ間,シマペッコウ バイ-カヤノミカニモリ間の種間関係を分析し た.