Abstract / Introduction / Summary:
2012 年 9 月 8 日,鹿児島県霧島市隼人町嘉例 川のミカン畑(図 1–2)で,鹿児島県内では初記 録となるイカタケ Aseroe arachnoidea Fisch. が発 生した(図 3).発見者は,著者の一人である西 である. イカタケは,担子菌門ハラタケ網スッポンタ ケ目スッポンタケ科アカイカタケ属の菌類で,中 国・ジャワ・ボルネオ・スマトラ・スリランカ・ マレーシア・ニュージーランド・ベトナムなど主 に熱帯地方に分布する.国内では,これまで宮崎・ 大分・高知・香川・鳥取・京都・愛知・宮城(今 関・ 本 郷,1998), 沖 縄・ 広 島・ 愛 媛( 吉 見, 1983),長崎(中西,1991),三重・石川(池田, 1996),熊本・島根・富山・滋賀(橋屋,2011) などの各府県で発見されている. 爬虫類の卵に似た白色球形のイカタケ幼菌(図 4)の成長は夜半から早朝にかけて始まり,頂部 が割れて柄が伸び,やがて腕部が放射状から水平 に拡がり,子実体の成熟は午前中に完了すること が多い(吉見,1983).腕部の付け根には,黒褐 色で悪臭を放つ粘液化した基本体がある.胞子は この粘液に包まれていて,匂いに誘引されたハエ な ど の 昆 虫 に よ っ て 運 ば れ る( 今 関・ 本 郷, 1998). 筆者(西)は 2012 年 9 月 8 日発見の日から 2013 年 3 月 17 日まで毎日,イカタケの発生から 消失までの状況を観察した.鹿児島県で初めて発 生したイカタケについて,いくつかの知見が得ら れたので報告する.