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南西諸島におけるアリグモの地理的変異

山﨑健史

Abstract / Introduction / Summary:

ア リ グ モ Myrmarachne japonica Karsch は, ハ エトリグモ科アリグモ属に属するクモで,ロシア 極東部,中国,韓国,日本,台湾と広く分布する. アリグモ属に属する種はふつう形態・行動がアリ に良く似ており,その類似は捕食者からの攻撃を 避けるためのベイツ型擬態によるものだと考えら れている(Cushing,2012; Huang et al., 2011; Nel- son & Jackson, 2006).一般的に本属の種は性的二 型があり,オスはメスに比べて巨大な上顎をもつ (Figs. 1–2).アリグモ属は世界から約 280 種,東 南アジアから約 150 種が知られており,アフリカ, 東南アジア,オーストラリアの熱帯地域で特に種 数が多い(Platnick,2012; Prószyński,2012).日 本からは 6 種のみが知られている(小野・池田・ 甲野,2009; Yamasaki & Huang,2012). 南西諸島は,屋久島から与那国島まで南北約 1200 km に渡って,100 以上の島々が連なり,温 帯と亜熱帯気候の移行帯を含んでいる.このよう な地理的・気候的特徴は,日本本土から南西諸島 に広く分布するようなクモ種において,生活環や 体サイズの変異を引き起こす要因になることが知 られている(馬場・宮下,2008).本研究に先立っ て行なわれた予備調査で,南西諸島産のアリグモ は体サイズが小さくなることが分かっている.本 研究では,日本本土から南西諸島にかけて広く分 布するアリグモが,どのような体サイズの地理的 変異傾向を示すのか明らかにすることを目的とし て行なった.